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  • 船の燃費を悪くするフジツボがくっつかないようにするには?

毒性を示さない新たな付着阻害剤の開発が世界中で求められています。有機化合物であるザイレミンおよびその関連化合物が、フジツボの付着を阻害する効果を持ち、かつ毒性を示さないことを発見しました。生物や環境に優しい新たな防汚塗料の開発が期待されます。

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汚損生物が引き起こす経済的・環境的課題

フジツボをはじめとする付着生物は、船底や沿岸の発電所設備などに固着することで、海洋産業界に多大な被害をもたらす「汚損生物」と呼ばれています。

  • 船舶への影響: 船底に付着すると水の抵抗が増大し、燃費が格段に悪化します。これは深刻な経済的損失につながります。
  • 発電所への影響: 海水を取り込むパイプラインに付着すると、熱交換や冷却システムの効率低下を引き起こします。
  • 漁網への影響:付着により網の目がふさがり、魚類の酸欠状態や魚体表面の損傷が生じ、漁獲量が減少します。また、漁網の重量増加により、漁業関係者の作業に支障を及ぼします。

これらの付着生物による被害の防止は、世界規模で解決すべき重要な社会的課題の一つです。

新しい付着阻害剤へのニーズ

現在使用されている多くの付着阻害剤は、生物に対する毒性を持ち、海洋環境への悪影響が報告・懸念されています。そのため、効果を持ちつつ、生物や環境に負荷の少ない、安全で環境にやさしい新しい付着阻害剤の開発が強く求められています。

ザイレミンの発見と評価

フジツボは、キプリス幼生という段階で付着場所を探索し、一度固着すると、その場所で一生を過ごします。この付着・変態の過程を妨害することが、新しい防汚技術の鍵となります。

私たちの研究グループは、ザイレミンとその関連化合物に着目し、タテジマフジツボのキプリス幼生に対する付着阻害効果と毒性を評価しました。

ザイレミンおよびその類縁化合物は、非常に低い濃度でフジツボの付着を効果的に阻害し、かつ生物に対する毒性を示さないことが明確になりました。

今後の展望

今回の発見は、生物を殺さずに付着だけを妨害する という、環境負荷の少ない画期的な防汚剤開発への大きな一歩です。

今後、ザイレミンおよびその関連化合物を用いることで、効果的で安全、かつ生物・環境にやさしい新たな防汚塗料が開発され、海洋産業の持続可能な発展に貢献することが期待されます。

髙村先生の研究をもっと知りたい!→有機化学研究室