フジツボをはじめとする付着生物は、船底や沿岸の発電所設備などに固着することで、海洋産業界に多大な被害をもたらす「汚損生物」と呼ばれています。
これらの付着生物による被害の防止は、世界規模で解決すべき重要な社会的課題の一つです。
現在使用されている多くの付着阻害剤は、生物に対する毒性を持ち、海洋環境への悪影響が報告・懸念されています。そのため、効果を持ちつつ、生物や環境に負荷の少ない、安全で環境にやさしい新しい付着阻害剤の開発が強く求められています。
フジツボは、キプリス幼生という段階で付着場所を探索し、一度固着すると、その場所で一生を過ごします。この付着・変態の過程を妨害することが、新しい防汚技術の鍵となります。
私たちの研究グループは、ザイレミンとその関連化合物に着目し、タテジマフジツボのキプリス幼生に対する付着阻害効果と毒性を評価しました。
ザイレミンおよびその類縁化合物は、非常に低い濃度でフジツボの付着を効果的に阻害し、かつ生物に対する毒性を示さないことが明確になりました。
今回の発見は、生物を殺さずに付着だけを妨害する という、環境負荷の少ない画期的な防汚剤開発への大きな一歩です。
今後、ザイレミンおよびその関連化合物を用いることで、効果的で安全、かつ生物・環境にやさしい新たな防汚塗料が開発され、海洋産業の持続可能な発展に貢献することが期待されます。
髙村先生の研究をもっと知りたい!→有機化学研究室